繁忙期の請求漏れで追徴課税 — 仙台の写真スタジオが前売りパッケージと即時発行で漏れゼロ・税務問題ゼロにした話

InvoiceFlow編集部 — 2026年5月30日公開 — 読了およそ10分

千葉俊(ちば・しゅん)さんは、仙台市青葉区で写真スタジオ「STUDIO TOH」を主宰している。手がけるのは大きく3つ。秋から冬にかけての七五三や成人式の記念撮影、年間を通じての証明写真・履歴書写真、そして地元企業の商品撮影や役員ポートレートといった企業撮影だ。

スタジオを構えて8年。腕は確かで、口コミで予約が埋まる人気スタジオだ。だが、この事業には一つ、構造的にやっかいな特徴があった。季節変動が極端に激しいことだ。

11月に1年分が集中する事業

七五三のシーズン、特に10月から11月にかけて、スタジオは戦場になる。土日は朝から晩まで予約が詰まり、平日も着付けと撮影でフル稼働。家族写真、お参り用の前撮り、衣装レンタル、アルバム、追加プリント——一組の家族から発生する商品とサービスは多岐にわたる。この2ヶ月で、年間売上の半分近くが動く。

一方、年明けから春にかけては閑散期だ。証明写真の細々とした売上はあるものの、スタジオの固定費——家賃、機材のリース、スタッフの人件費——は容赦なく毎月出ていく。繁忙期に稼いで、閑散期を食いつなぐ。これが千葉さんの事業の宿命だった。

繁忙期、請求書どころではなかった

問題は、最も売上が立つ繁忙期に、最も請求業務がおろそかになることだった。七五三のピーク、千葉さんは撮影と接客でいっぱいいっぱい。お客さんは現場で撮影代の一部を現金やPayPayで払い、アルバムや追加プリントは後日仕上がってから精算、というケースが多い。

「撮影に集中しているときに、誰が何をいくら払って、何が未精算で、何の請求書をまだ出していないか——とても全部は追えませんでした」と千葉さんは言う。後日まとめて処理しようと思っても、繁忙期が終わる頃には記憶も伝票もぐちゃぐちゃ。結果、いくつかの請求と売上計上が漏れた

税務署からの指摘

この請求漏れが、ある年、税務調査で問題になった。漏れていたのは悪意のある脱税などではなく、単なる繁忙期のドサクサによる計上漏れだった。だが税務署から見れば、売上の計上が一部抜けている、という事実は変わらない。

とくに痛かったのは、前受金の扱いだ。お客さんから先に受け取ったアルバム代や撮影代を、いつの売上として計上するか。現場で受け取った現金やPayPay入金が、どの撮影に対応するのか紐づけられておらず、計上のタイミングがあいまいだった。結果、千葉さんは追徴課税を受けることになった。本来払うべきだった税金に加え、加算税まで取られ、金額以上に精神的なダメージが大きかった。

「真面目にやってるつもりだったんです。脱税なんて考えたこともない。でも『記録がないこと』自体が、税務上は問題になる。それを身をもって知りました」

InvoiceFlowで「繁忙期でも漏らさない」仕組みを作った

千葉さんが立て直しに使ったのが InvoiceFlow だった。彼が組み込んだのは2つの仕組み。前売りパッケージ(前受金管理)と、繁忙期の即時発行だ。

1. 前売りパッケージで売上を平準化&前受金を管理

千葉さんはまず、七五三や成人式の撮影を「前売りパッケージ」として販売する形に切り替えた。「七五三お参りパック(前撮り+当日+アルバム+データ)」のように、商品を束ねて、撮影前にパッケージ料金を受け取る。

これには2つの効果があった。1つは資金繰り。閑散期である夏〜初秋のうちに前売りパッケージを販売しておけば、繁忙期前にある程度の前受金が入る。年間の売上の波が、少しなだらかになった。

もう1つが、今回の核心である前受金の管理だ。InvoiceFlowでは、受け取った前受金を顧客ごと・撮影ごとに紐づけて記録できる。「いつ・誰から・何のパッケージとして・いくら受け取ったか」が最初から記録される。撮影が完了し、役務を提供した時点で、その前受金を売上として正しく認識する。計上のタイミングがあいまいになる余地が消えた。

2. 繁忙期の即時発行 — その場でPDFを出す

もう一つが、繁忙期の請求漏れ対策だ。千葉さんは「後でまとめて処理する」のをやめ、撮影や精算が発生したその場で請求書・領収書を即時発行する運用に変えた。

InvoiceFlowはモバイルアプリで、しかもオフラインでも動く。撮影の合間、スタジオの片隅で、スマホから数十秒で請求書PDFを作って発行できる。お客さんがその場でPayPayや現金で払えば、即座に領収書も出せる。「後で」を作らないことが、漏れをゼロにする最大のコツだった。

「最初は『繁忙期にそんな余裕ない』と思ったんです」と千葉さん。「でも実際は逆でした。その場で30秒かけて発行する方が、後でぐちゃぐちゃの伝票を1週間かけて整理するより、はるかに楽だった。漏れる不安がないので、撮影にも集中できる」

3. インボイス制度と適格請求書・領収書

千葉さんのスタジオには、個人のお客さんだけでなく、商品撮影や役員ポートレートを依頼する企業客もいる。企業客は経費計上のために適格請求書(インボイス)を求める。千葉さんは適格請求書発行事業者として登録番号(T+13桁)を取得し、InvoiceFlowで発行する請求書・領収書に記載要件を満たした形で印字するようにした。

企業撮影の請求と、個人客の前受金管理を同じアプリで一元化したことで、消費税の計上も整然と追えるようになった。前受金と役務提供のタイミングが記録として残っているので、次に税務調査が来ても、いつでも説明できる。

結果 — 請求漏れゼロ、税務問題ゼロ、資金繰り安定

仕組みを入れてから2シーズン。千葉さんのスタジオは大きく変わった。

「税務署に追徴された年は、本当に落ち込みました」と千葉さん。「でも、あれがなかったら仕組みを変えなかったとも思う。今は、繁忙期にどれだけ忙しくても、お金の記録だけは絶対に漏れない。これが、撮影に全力を出せる土台になっています」

季節変動の激しい事業者への教訓

千葉さんの経験は、繁忙期と閑散期の差が大きいあらゆる事業——観光、イベント、農産物、季節商材——に当てはまる。

千葉さんは今、来シーズンの前売りパッケージの予約をすでに受け始めている。「繁忙期が、もう怖くないんです。むしろ楽しみになりました」