FC精算5日が1日に — 名古屋の美容室チェーン創業者が店舗別プロフィールと統一会員管理でトラブルをゼロにした話

InvoiceFlow編集部 — 2026年5月30日公開 — 読了およそ10分

松井麗華(まつい・れいか)さんは、名古屋市内で美容室チェーン「Lumiere(ルミエール)」を5店舗展開している。栄、今池、星ヶ丘に直営3店、そして地下鉄沿線の郊外にフランチャイズ2店。会員はチェーン全体でおよそ1200名にのぼる。元はトップスタイリストとして一店舗から始め、10年で5店舗まで広げた、地元では知られた経営者だ。

美容師としての腕、そして店づくりのセンスには自信があった。だが、店舗が増えるにつれて、松井さんを毎月確実に消耗させるものがあった。フランチャイズ(FC)店との精算と、店舗を跨ぐ会員の管理だ。

毎月5日かかっていたFC精算

松井さんのチェーンでは、FC2店との間に歩合(ロイヤリティ)の取り決めがある。FC店は本部のブランド・商材・予約システムを使う代わりに、売上の一定割合を本部に納める。さらに、本部が一括仕入れした薬剤や物販商品をFC店に卸す分の代金、本部主催の研修費、共同販促費の按分など、毎月いくつものお金がFC店と本部の間を行き来する。

問題は、これらが全部バラバラに管理されていたことだ。売上歩合はFC店から送られてくる売上報告のエクセル、卸代金は仕入れの伝票、研修費は別の表。松井さんは毎月、月初の数日を費やして、これらを一つずつ照合し、FC店ごとの「差引いくら本部に払うか/本部が払うか」を手計算で出していた。

「数字を拾い集めるだけで丸一日。それを2店分やって、間違いがないか検算して、請求書を作って……気づいたら毎月5日くらい、精算だけに溶けてました」と松井さんは振り返る。

精算ミスが信頼を削っていた

もっと深刻だったのは、手計算ゆえのミスだ。歩合率の適用を一店だけ間違えたり、卸代金の二重計上があったり。FC店のオーナーは当然それに気づき、「先月の精算、おかしくないですか」という連絡が来る。そのたびに松井さんは元データを掘り返して確認し、訂正する。

金額の大小ではなく、「本部の出す数字が信用できない」という空気が、FC店との関係を少しずつ蝕んでいた。FC契約は信頼が土台だ。精算でモメるたびに、その土台が削れていく感覚が松井さんにはあった。

会員の「店舗跨ぎ消化」トラブル

もう一つの頭痛の種が、会員管理だった。Lumiereは回数券(前売りの施術チケット)や、年間メンバーシップを販売している。たとえば「カット&カラー10回券」を栄店で買った会員が、引っ越しや気分で今池店に行くこともある。チェーンなのだから、どの店でも使えるのが当たり前——のはずだった。

ところが、各店が会員情報をバラバラに管理していたため、栄店で買った回数券の残り回数を今池店が把握できない、という事態が頻発した。会員は「まだ3回残っているはず」と言うが、今池店の台帳には情報がない。栄店に電話して確認している間、会員を待たせる。ときには残回数の認識がズレて、本来使えるはずの施術を「もう残っていません」と断ってしまう。会員の不満は、そのままチェーン全体の評判に跳ね返った。

とくにFC店が絡むと厄介だった。直営店で買った回数券をFC店で消化した場合、その施術の原資(前受金)は本部が受け取っているのに、施術コストはFC店が負担する。この「店舗跨ぎ消化」の精算が、月次のFC精算をさらに複雑にしていた。

InvoiceFlowで「店舗別」と「会員横断」を両立させた

松井さんがチェーンの管理基盤として導入したのが InvoiceFlow だった。決め手は2つ。店舗別プロフィールで店ごとの請求・精算を分けつつ、会員(顧客)データはチェーン横断で一元管理できる構造だ。

1. 店舗別プロフィールでFC精算を自動化

InvoiceFlowでは、事業プロフィールを複数持てる。松井さんは直営3店+FC2店、それぞれに独立したプロフィールを作った。各店の売上、卸代金、研修費、販促費按分は、それぞれのプロフィールに紐づいて記録される。

FC精算では、本部とFC店の間のやり取りを「請求書」として双方向に発行する形に統一した。本部からFC店へは「ロイヤリティ請求+卸代金請求+研修費請求」を、性質別のカテゴリ分類付きで一枚にまとめる。FC店から本部への報告も同じフォーマットに乗せる。すると、月末に「差引いくら」が自動で集計される。手計算で5日かけていた照合が、データの集計に置き換わった。

カテゴリ分類が効いたのは、FC店オーナーが「何にいくら払っているか」を一目で確認できるようになったことだ。ロイヤリティはいくら、卸代金はいくら、研修費はいくら——内訳が透明になり、「先月の精算おかしくないですか」という問い合わせ自体が消えた。

2. 統一会員管理で店舗跨ぎを解消

会員データは、店舗プロフィールとは切り離して、チェーン共通の顧客台帳として一元化した。回数券や前受金(前受けた施術代)は会員ごとに紐づき、どの店からでも残回数・残額が見える。

栄店で「カット&カラー10回券」を買った会員が今池店に来ても、今池店のスタッフは即座に残り回数を確認できる。電話で問い合わせる必要も、会員を待たせる必要もない。「残っていません」と誤って断る事故も消えた。

店舗跨ぎ消化の精算も自動になった。直営店で受け取った前受金を、FC店が施術として消化したとき、その分が月次のFC精算に自動で反映される。以前は手で拾っていた「店を跨いだ消化分」が、会員データと店舗プロフィールの連動で勝手に計算されるようになった。

3. インボイス制度と前受金の税務処理

回数券のような前受金には、消費税の計上タイミングという論点がある。一括で受け取った代金を、施術の都度に売上として認識していくのか。チェーンが適格請求書発行事業者として正しくインボイス(適格請求書)を発行するには、前受金と実際の役務提供を会員単位で追えていることが前提になる。InvoiceFlowで会員ごとの消化履歴がきれいに残るようになったことは、インボイス制度・消費税対応の面でも松井さんを助けた。本部もFC店も、登録番号(T+13桁)入りの適格請求書を、整合の取れた数字で発行できるようになった。

結果 — 精算5日→1日、FCトラブルゼロ

新しい仕組みを回し始めて数ヶ月。松井さんの月次は様変わりした。

「FC店のオーナーから、『今の精算、すごく分かりやすくなった』と言われたとき、正直うれしかったです」と松井さん。「お金の話で揉めないって、こんなに気持ちが軽いんだと。私はもう、月初を精算で潰さなくていい。その時間で、6店目の準備をしてます」

多店舗・FC展開する事業者への教訓

松井さんの経験から、複数拠点やフランチャイズを抱える事業者に当てはまる原則がある。

松井さんは今、6店目の出店候補地を探している。「店が増えるのが怖くなくなりました。仕組みが増えても回るって分かったので」