沖縄のクラフトビール醸造所が、税率プリセットで申告ミスをゼロにした話

InvoiceFlow編集部 — 2026年5月30日公開 — 読了目安10分

大城建明(おおしろ・けんめい)さんは、沖縄本島中部の小さな町で、家族経営のクラフトビール醸造所「島風ブルーイング」を営んでいる。島の柑橘やシークヮーサー、月桃を使ったビールが評判で、地元はもちろん観光客にも人気だ。年商はおよそ3000万円。妻と弟、そしてパート数名で回す、まさに家族の事業である。

建明さんはビール造りには絶対の自信がある。だが、もう一つの「仕込み」——税金の処理——は、彼を何年も悩ませてきた。そしてある年、その悩みはついに、痛い形で現実になった。税務調査で申告ミスが見つかり、加算税を払う羽目になったのだ。

クラフトビール醸造所を襲う「税金の三重苦」

醸造所の税務が複雑なのには、はっきりした理由がある。三つの税金の世界が、一つの事業の中で同時に動いているのだ。

1. 酒税

ビールには酒税がかかる。製造数量に応じて課される、消費税とはまったく別の税金だ。これだけでも管理が必要なのに、建明さんの場合は出荷形態が複数あるため、酒税の計算と他の税の計算がしばしば頭の中で混線した。

2. 消費税と軽減税率

ここが最大の落とし穴だった。建明さんの販売先は三つに分かれる。

同じビールでも、「卸の瓶」は8%、「タップルームで飲む生」は10%、「お土産の瓶」は8%。さらにグッズ(Tシャツやグラス)は10%。建明さんは、これを手書きの伝票と感覚で振り分けていた。「正直、どれが8%でどれが10%か、現場では混乱しっぱなしでした」。

3. 適格請求書(インボイス)

2023年のインボイス制度開始で、酒販店や飲食店といったB2Bの取引先は、仕入税額控除のために適格請求書を求めるようになった。登録番号、税率ごとに区分した金額、税額——これらを正確に記載した請求書を出さなければならない。一方、タップルームの観光客には簡易な対応でいい。建明さんの手書き伝票では、この使い分けが追いつかなくなっていた。

申告ミスと加算税

そして、恐れていたことが起きた。ある年の消費税の申告で、軽減税率8%で計上すべき卸売上の一部を、誤って10%で処理したり、逆に10%であるべきタップルームの店内飲食を8%にしていたりと、税区分の取り違えが複数見つかったのだ。

税務調査の結果、修正申告となり、本来納めるべき税額に加えて加算税と延滞税が課された。金額もさることながら、建明さんがこたえたのは精神的なダメージだった。「悪気はないんです。でも『きちんと管理していなかった』と言われると、返す言葉がなかった。家族でやっている事業だからこそ、信用に傷がつくのが怖かった」。

転機:「税率は、商品に紐づけて固定しなさい」

建明さんが相談したのは、地元の商工会で紹介された税理士だった。その税理士の助言は明快だった。「税区分を、その都度人間が判断するのが間違いの元です。商品ごとに税率を最初から固定(プリセット)してしまえば、選ぶだけで正しくなる。請求書アプリでそれができますよ」。

紹介されたのが「InvoiceFlow」だった。商品ごと、あるいは商品カテゴリごとに、税率(8%/10%)をあらかじめ設定しておける。請求書を作るときはその商品を選ぶだけで、正しい税率が自動的に適用される。人間が現場でいちいち判断しなくていい。

仕組み:商品カテゴリ別の税率プリセット

商品マスタに税率を埋め込む

建明さんは、自社の全商品を一度棚卸しして、それぞれに税率を設定した。

こうしておけば、請求書や売上記録で商品を選んだ瞬間に、税率が確定する。「8%だっけ10%だっけ」と迷う余地がなくなった。間違えようがない。

販売先ごとに事業プロフィールを整理

さらに、卸(B2B)と小売(B2C)で事業プロフィールを分けた。卸のプロフィールには適格請求書の体裁——登録番号、税率区分ごとの小計、税額——を標準で組み込み、酒販店・飲食店からインボイスを求められても即座に正しい形式で発行できるようにした。タップルームの小売は簡易な様式で、PayPayや現金、観光客のクレジットカード決済を記録する。

定期請求で卸の手間を削減

酒販店や飲食店への卸は、毎月決まった取引先への継続的な掛取引が多い。建明さんはこれを定期請求で半自動化した。月次の請求書が自動で生成され、税率区分もプリセット通りに正しく入る。「請求のために夜なべしていた時間が、まるごと消えました」。

結果:申告ミスがゼロに

この仕組みを導入してから、建明さんの税区分の取り違えはゼロになった。理由はシンプルだ。人間が判断する箇所を、システムが消したからだ。商品を選べば税率が決まる。卸プロフィールを使えばインボイスの体裁が整う。ミスの入り込む隙がなくなった。

翌年の消費税の申告は、税理士が「驚くほどスムーズだった」と言うほど整然と進んだ。税率8%の売上、10%の売上、課税仕入れが、最初からきれいに区分されているので、申告書への転記がそのままできる。当然、加算税のような追徴も二度と発生していない。

「ビールの仕込みと同じで、税金も『仕込みの段階で正しくしておく』のが一番なんだと分かりました」と建明さんは笑う。「最初に商品ごとの税率をきちんと決めておけば、あとは自動。発酵を見守るみたいに、安心して任せられる」。

家族経営だからこそ効いた

もう一つ大きかったのは、属人化の解消だ。以前は税区分の判断が建明さんの頭の中にしかなく、妻や弟が請求書を作ると間違いが起きやすかった。今は商品を選ぶだけで誰が作っても正しくなるので、家族の誰でも請求と記録を担当できるようになった。「私がビールに集中している間に、妻が請求を回してくれる。役割が分けられるようになったのが、本当に助かっています」。

同じように複数税率を扱う人へ

軽減税率8%と標準税率10%が混在する事業——食品製造、酒類販売、飲食店の物販併設、八百屋やパン屋のイートイン併設、菓子製造——に共通する教訓はこうだ。

  1. 税区分を現場の人間に判断させない。商品ごとに税率を最初から固定する。
  2. 卸(インボイス必須)と小売(簡易可)を分ける。適格請求書の体裁をプロフィールに埋め込む。
  3. 定期取引は半自動化する。手間とミスを同時に減らす。

使ってみる

InvoiceFlowはGoogle Playから無料でダウンロードできる。商品カテゴリ別の税率プリセット(軽減税率8%・標準税率10%)、適格請求書(インボイス)対応、複数の事業プロフィール、定期請求、カスタムテンプレートエディタ、PDF出力、オフライン動作、バックアップなどがサブスクなしで使える。観光客の海外決済を見据えた多通貨にも対応している。

大城建明さんの「島風ブルーイング」は、この夏から県外への通信販売を本格化させる。「税金の不安が消えたから、攻めの一手が打てる。守りが固まると、攻められるんですよ。ビールも経営も同じです」。