東京の若手弁護士、顧問料120万円の滞納と複雑な料金体系——複数料金モデルで未収金23%減

InvoiceFlow編集部 — 2026年5月30日公開 — 読了約10分

東京・四谷の小さな法律事務所で、村上拓也さんは独立して3年目を迎えていた。大手事務所での修業を経て自分の事務所を構え、個人のクライアントと、中小企業の顧問先の両方を抱えている。仕事は順調に増えていた。だが、増えていたのは仕事だけではなかった。未収金もまた、静かに膨らんでいた。

「法律のプロのはずなのに、自分の事務所の債権管理が一番ずさんだった、という笑えない話です」と村上さんは苦笑する。

複雑すぎる料金体系が、回収を妨げていた

弁護士の報酬は、一つの形では収まらない。村上さんが扱っていた料金体系は、主に三つあった。

この三つが、クライアントごと・案件ごとに入り混じる。ある企業は顧問料を払いつつ、個別案件で着手金+成功報酬。ある個人は時間制。村上さんはこれらを手帳とExcelで管理していたが、何が・いつ・いくら請求済みで、いくら未回収なのかが、把握しきれなくなっていた。

未収金が1年放置されていた

最も深刻だったのは、請求と回収の管理が属人的で、漏れが生じていたことだ。タイムチャージの作業時間を集計し忘れる。成功報酬の請求タイミングを逃す。顧問料の入金確認が後回しになる。気づけば、1年近く放置された未収金がいくつも存在していた。

顧問料120万円の滞納

象徴的だったのが、ある中小企業の顧問料の滞納だった。月10万円の顧問契約だったが、その企業からの入金が、いつの間にか止まっていた。村上さんがそれに気づいたのは、滞納が積み重なって120万円に達したときだった。

「毎月の顧問料って、入っているのが当たり前という感覚で、一件一件の入金確認を怠っていたんです。気づいたときには1年分。さすがに青ざめました」

士業にとって、これは単なる金額の問題ではない。長く放置すれば、回収はますます難しくなる。かといって、顧問先との関係を考えると強く催促もしにくい。村上さんは、回収と関係維持の板挟みになっていた。

源泉徴収という、もう一つの複雑さ

弁護士の報酬には源泉徴収が関わる。企業が弁護士に報酬を支払う際、報酬額から源泉徴収を行うのが原則だ(100万円以下の部分は10.21%など)。村上さんの請求書には、この源泉徴収額を正しく計算して記載する必要があった。手計算では、ミスや記載漏れが起きやすい。弁護士報酬の報酬規定に沿った適正な金額を、源泉徴収まで含めて正確に示すことが求められていた。

転機:料金モデルごとに「請求の型」を持つ

村上さんが立て直しに着手したのは、120万円の滞納が引き金だった。彼はAndroidスマホでInvoiceFlowを導入し、複雑な料金体系を「型」で整理することにした。

複数の料金モデルを使い分ける

時間制、着手金+成功報酬、顧問料——それぞれに合った請求の形を整えた。

顧問料の滞納を二度と起こさない仕組み

顧問料を定期請求にしたことで、毎月の請求が自動で立ち、支払期限が近づけばリマインダーが働く。入金がなければすぐに気づける。「毎月入っているのが当たり前」という油断が、最も危険だった。仕組みで監視することで、120万円のような滞納が積み上がる前に手を打てるようになった。

ちなみに、滞納していた顧問先との120万円については、整理された請求記録を基に丁寧に状況を説明し、分割での支払いに応じてもらうことで、最終的にほぼ全額を回収できた。「記録がきちんとしていたから、感情的にならずに事務的に話を進められた。これが大きかった」

顧客を分離して管理する

村上さんは顧客プロフィール複数事業プロフィールを活用し、個人クライアントと顧問先企業を分けて管理した。さらに、源泉徴収が関わる企業向けと、関わらない個人向けで請求の扱いを区別。企業向けの請求書には、報酬額・源泉徴収額・差引請求額を明記し、報酬規定に沿った適正な体裁を整えた。

柔軟な請求オプションで関係を保つ

士業の回収には、関係維持という独特の難しさがある。村上さんは、分割払いや支払期限の調整といった柔軟な請求オプションを、状況に応じて提示できるようにした。一方的に督促するのではなく、相手の事情に配慮した選択肢を示すことで、回収と関係維持を両立させた。PDFの請求書と明確な記録があることで、こうした交渉も冷静に進められた。

結果:初年度で未収金が23%減

請求体制を整えてから1年。村上さんの事務所の数字は明確に改善した。

村上さんが強調するのは、回収の改善が「関係を壊さずに」実現したことだ。「弁護士は、依頼者との信頼が命です。でも、お金にルーズだと、その信頼も結局は守れない。きちんと請求し、きちんと回収することは、プロとしての誠実さでもあると気づきました」

未収金が23%減ったことで、事務所のキャッシュフローは安定し、村上さんは新たに事務員を一人雇う余裕も生まれた。事務作業から解放された分、彼は本来の仕事——依頼者の問題を解決すること——に、より多くの時間を注げるようになった。

士業・専門サービスの方へ

村上さんのように、複数の料金体系を扱う士業・専門職は多い。税理士、社労士、行政書士、コンサルタント、設計士——共通する課題は多い。彼の経験から、ポイントをまとめる。

1. 料金モデルごとに「請求の型」を持つ

時間制、成功報酬、顧問料。それぞれに合った請求の形を用意し、案件ごとに迷わないようにする。

2. 定期収入こそ監視する

顧問料のような「入って当たり前」の収入が、最も油断を生む。定期請求とリマインダーで、滞納に即気づける仕組みを持つ。

3. 源泉徴収を正確に記載する

報酬規定に沿った金額と、源泉徴収額を正しく示す。手計算のミスを避け、プロらしい請求書を出す。

4. 柔軟な請求で関係を守る

士業の回収は、関係維持との両立が鍵だ。分割や期限調整といった選択肢を、記録に基づいて冷静に提示する。

使ってみる

InvoiceFlowはGoogle Playから無料でダウンロードできる。テンプレート(時間制の明細)、分割払い(着手金+成功報酬)、定期請求(顧問料)、期限リマインダー、顧客プロフィール、複数事業プロフィール(個人・企業の分離)、源泉徴収を記載できる請求書、PDF書き出しは、サブスクなしで使える。オフラインでも動くので、出先でも請求書を作れる。バックアップ/復元で、機種変更時もクライアント情報を安全に引き継げる。

村上拓也さんは今、顧問先を計画的に増やすフェーズに入っている。「請求と回収の土台ができたから、安心して事務所を大きくできる。お金まわりが弱い士業は、結局スケールできない。それを身をもって学びました」