タイムゾーンと案件追跡の混乱──札幌のITコンサルが月8時間の事務を45分に減らした時間追跡術
InvoiceFlow 編集部 · 2026年6月1日 · 読了目安15分
札幌市・中央区。雪深い北の街で、小林洋介さん(39歳)は独立系のITコンサルタントとして働いている。専門は、中小企業の業務システム導入支援と、クラウド移行のアドバイザリー。東京の大手SIerで10年勤めたのち、Uターンして札幌で独立した。「どこに住んでいても、価値を出せる仕事をしたかった」というのが独立の動機だ。
その思いどおり、小林さんの仕事は土地に縛られなかった。だが、土地に縛られないことは、別の混乱を生んだ。
3つのタイムゾーン、3つの案件タイプ
小林さんの仕事は、大きく3つに分かれていた。
- 札幌の地元企業:対面でのシステム導入支援。製造業や卸売業が多く、じっくり腰を据えた長期案件。請求は円、銀行振込。
- 東京のリモート案件:前職の人脈経由のスポット案件。オンライン会議とチャットで進行。スピード感が求められる。請求は円。
- 海外案件:シンガポールや米国の企業向けのアドバイザリー。完全リモート。時差との戦い。請求はドルやシンガポールドル。
すべての案件が時間単価制だった。「1時間あたりいくら」で稼働時間を積み上げ、月末にまとめて請求する。シンプルなようでいて、これが地獄の入り口だった。
時間追跡の混乱と「請求漏れ」
小林さんは、稼働時間をスマホのメモ帳や、案件ごとにバラバラなスプレッドシートで記録していた。ところが、複数の案件を並行して進めると、この記録がたちまち破綻した。
- 札幌の案件で午前中に2時間、東京のリモートで午後に1.5時間、夜にシンガポールの案件で1時間──こうした断片的な稼働を、どの案件に何時間使ったか、正確に記録しきれない。
- 海外案件では時差が絡む。シンガポール時間で記録したのか、日本時間なのか、混乱する。会議が日付をまたぐこともある。
- 結果として、記録し忘れた稼働時間が「請求漏れ」として消えていく。小林さんの試算では、月に数時間分、金額にして数万円が請求できずに失われていた。
「時間単価で働くということは、自分の時間を切り売りしているということ。その時間を記録し損ねるのは、文字通りお金をドブに捨てているのと同じです。なのに、記録の仕組みがあまりにずさんだった」
さらに、月末の請求書作成も悪夢だった。3つの案件タイプ、複数の通貨、バラバラな記録を突き合わせ、それぞれの請求書を作る。この事務作業に、毎月およそ8時間を費やしていた。
インボイス制度の「登録すべきか」問題
独立して間もない小林さんを悩ませたのが、インボイス制度の登録判断だった。
消費税には、課税売上高が一定額以下の事業者を免税とする制度がある。独立当初の小林さんは、この免税事業者だった。だが、インボイス制度の下では、適格請求書を発行するには課税事業者となって登録番号を取得する必要がある。
「悩みました。免税事業者のままなら消費税を納めなくて済む。でも、取引先(特に課税事業者である企業)からすれば、適格請求書を出せない事業者は仕入税額控除ができず、敬遠されかねない。とくに東京の大手案件では、『インボイス対応は必須』と言われることが増えていました」
小林さんは税理士と相談し、取引先の多くが課税事業者であることを踏まえて、課税事業者を選択し、適格請求書発行事業者として登録することを決めた。これにより消費税の納税義務は生じるが、取引先からの信頼を保ち、案件を失わずに済む。「ここは、目先の納税より、取引継続を取るべきだと判断しました」
ただし、海外案件は事情が異なる。国外の事業者へのサービス提供は、国外取引として消費税が不課税になるものもある。国内案件はインボイス対応、海外案件は不課税──この区分も、正確に管理する必要があった。
プロジェクト/時間追跡で混乱を整理する
小林さんが導入したのが、請求書アプリ「InvoiceFlow」だった。決め手は、プロジェクト/時間追跡機能と多通貨対応、そしてインボイス制度対応が一体になっていたことだ。
案件ごとに稼働時間を記録
小林さんは、案件(プロジェクト)ごとに稼働時間を記録するようにした。札幌の案件で2時間、東京で1.5時間、シンガポールで1時間──稼働するたびにその場でスマホに記録すれば、どの案件に何時間使ったかが正確に積み上がる。
「断片的な稼働を、その場で正しい案件に紐づけて記録できる。これだけで、請求漏れがほぼなくなりました。今まで月数万円分をドブに捨てていたのが、まるごと回収できるようになった」
時間単価から請求書を自動生成
記録した稼働時間に、案件ごとの時間単価を掛ければ、請求額が自動で算出される。月末には、各案件の稼働時間と単価が反映された請求書が、ほぼ自動で組み上がる。「8時間かけて手作業で突き合わせていたのが、確認と微調整だけで済むようになりました」
多通貨で海外案件もそのまま
海外案件はドルやシンガポールドルで請求し、取引日のレートで円換算が記録される。「通貨を意識せず、その案件の通貨でそのまま請求できる。時差で混乱していた海外案件の管理が、すっきり整理されました」
インボイス対応と不課税の区分
国内案件には登録番号と消費税を記載した適格請求書を発行。海外案件は国外取引として区分。InvoiceFlowが登録番号や税率を自動で反映してくれるので、インボイス制度の記載漏れの心配がなくなった。「課税事業者になった以上、適格請求書をきちんと出すのは義務。それが自動で担保されるのは大きい」
結果:月8時間の事務が45分に
仕組みを整えてから半年。小林さんの月末は様変わりした。
- 月末の事務作業:8時間 → 45分。稼働時間が案件ごとに記録済みで、請求書がほぼ自動生成されるため。
- 請求漏れ:月数万円分 → ほぼゼロ。断片的な稼働もその場で記録できるように。
- インボイス対応:完璧に。登録番号・税率が自動反映され、国内・海外の区分も明確に。
- 時差による混乱:解消。案件ごとの記録で、どのタイムゾーンの稼働かが整理された。
「月8時間って、丸一日分の稼働です。それが45分になった。浮いた時間で、新しい技術のキャッチアップや、案件の質を高めることに使えるようになりました。ITコンサルって、学び続けることが商品価値そのもの。事務に時間を取られている場合じゃないんです」
さらに、請求漏れがなくなったことで、実質的な収入も増えた。「月数万円の請求漏れがなくなったということは、年間で数十万円。これは無視できない金額です。働く時間は同じなのに、ちゃんと回収できるようになっただけで、収入が増えた」
複数事業プロフィールでコンサルと研修を分ける
小林さんは最近、企業向けのIT研修・セミナー事業も始めた。InvoiceFlowの複数事業プロフィール機能で、コンサルティング事業と研修事業を分けて管理。それぞれに適した請求書を出している。
定期請求で顧問契約を自動化
札幌の地元企業の中には、月額固定の顧問契約を結んでいる先もある。こうした案件には定期請求機能を使い、毎月の顧問料請求を自動化。「時間単価の案件と固定の案件が混在していても、それぞれ適した形で請求できる」
バックアップとカスタムテンプレートで盤石に
稼働記録と請求データは、小林さんの収入の根拠そのものだ。バックアップ/復元機能で定期的に保全し、カスタムテンプレートエディタで国内向け・海外向けの請求書テンプレートを使い分けている。
場所に縛られず働くプロフェッショナルへ
最後に、小林さんは同じように場所を選ばず働くフリーランス・コンサルタントへこう語った。
「リモートで、複数のタイムゾーンの案件を抱えて働く。これからどんどん増える働き方だと思います。でも、時間単価で働くなら、稼働時間の記録は命綱です。記録がずさんだと、自分の労働がそのまま漏れていく。案件ごとに、その場で、正確に記録する。インボイス制度の判断もきちんとして、国内・海外の区分を明確にする。この土台さえ整えれば、どこにいても、安心してプロの仕事に集中できます。僕は雪国の札幌から、世界中のクライアントと、対等に仕事をしています」
札幌・中央区。窓の外に雪が舞う中、小林洋介さんは今、3つのタイムゾーンの案件を、混乱なく回している。月末の8時間は、もう学びと成長の時間に変わった。