クライアント3種類で請求書バラバラ──大阪のデザイナーが月20時間の事務を4時間に減らしたテンプレート術

InvoiceFlow 編集部 · 2026年6月1日 · 読了目安15分

大阪・本町。オフィスビルとデザイン事務所がひしめくこの街で、田中健太さん(38歳)はフリーランスのグラフィックデザイナーとして10年のキャリアを積んできた。ロゴ、パッケージ、Webサイト、展示会のブースグラフィック──手がける仕事は幅広い。会社員時代の人脈と、コンペでの受賞歴が後押しし、独立後も仕事は途切れなかった。

だが田中さんには、毎月決まってやってくる「憂鬱な3日間」があった。月末の請求書作成だ。

3種類のクライアント、3種類のフォーマット

田中さんのクライアントは、大きく3つのタイプに分かれていた。それぞれが、請求書に求めるフォーマットが全く違ったのだ。

「同じ『請求書を出す』という作業なのに、3種類とも全く別物。大手向けはExcelの指定テンプレートに転記、中小向けは手書きに近い様式、スタートアップ向けは見た目を整えたPDF。これを毎月、クライアントごとに作り分けていました」

田中さんはこの作業を、月にざっと20時間費やしていた。クリエイターとしての本業を削って、深夜にExcelと格闘する。「デザインで食べているのに、一番時間を取られているのが請求書のレイアウト調整っていう皮肉。心底、嫌になっていました」

インボイス制度が追い打ちをかけた

そこに2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)が追い打ちをかけた。田中さんは適格請求書発行事業者として登録し、「T」から始まる13桁の登録番号を取得した。

適格請求書には、以下の記載が必須となる。

「特に厄介だったのが、税率ごとの区分です。デザイン業務は消費税10%ですが、たまに販促用のお菓子の差し入れや、軽減税率8%が絡む立替経費を請求に含めることがある。10%と8%を分けて、それぞれの消費税額を明記しなければならない。これを3種類のテンプレートすべてに反映させるのは、地獄でした」

登録番号の記載漏れがあれば、クライアントは仕入税額控除を受けられない。つまり「使えない請求書」になってしまう。再発行の連絡が来るたびに、田中さんは謝りながらExcelを開き直した。

カスタムテンプレートエディタとの出会い

限界を感じた田中さんが導入したのが、請求書アプリ「InvoiceFlow」のカスタムテンプレートエディタだった。これは、請求書のレイアウトを自分で組み立てられる機能だ。どのセクションをどこに置くか、どの項目を表示するか、ロゴや社印をどう配置するか──スマホやタブレットの画面上で、視覚的に設計できる。

田中さんは、3種類のクライアントそれぞれに専用テンプレートを作り込んだ。

テンプレート①:大手企業向け(フォーマル・項目厳格)

大手向けには、発注番号・部門コード・検収日を入れるカスタム項目を追加し、社印(電子印影)を所定の位置に配置。項目の並び順も先方の指定どおりに固定した。登録番号は最上部の事業者情報ブロックに常時表示。一度組んでしまえば、毎月は金額と数量を差し替えるだけで完成する。

テンプレート②:中小企業向け(シンプル・3点セット対応)

中小向けには、見積書・納品書・請求書を同じデザイン基調で出せるテンプレートを用意。消費税の内訳(10%対象・8%対象を分けた表)を大きく見やすく配置した。FAX送信前提の先には、白黒でも潰れないレイアウトに調整。

テンプレート③:スタートアップ向け(洗練・PDF即送付)

スタートアップ向けには、田中さんのデザインセンスを活かした、余白を効かせたモダンなレイアウト。自身の事業ロゴをあしらい、PDFとして即座に書き出してメールやチャットに添付できるようにした。「請求書すらポートフォリオの一部」という考え方だ。

「カスタムテンプレートエディタのすごいところは、一度作れば資産になることです。Excelのように毎回ゼロから整えるんじゃなくて、テンプレートを選んで中身を入れるだけ。しかも登録番号や消費税の区分計算は、アプリが自動でやってくれる。インボイス制度の記載漏れがゼロになりました」

複数事業プロフィールで屋号も使い分け

田中さんは実は、グラフィックデザインのほかに、副業で写真撮影のサービスも提供している。InvoiceFlowの複数事業プロフィール機能を使い、「デザイン事業」と「撮影事業」で別の屋号・別のロゴ・別の登録番号管理ができるようにした。それぞれの事業に紐づくテンプレートも分けてあるので、間違ったロゴで請求書を出す心配がない。

見積書から請求書への流れもスムーズに

日本のB2B取引では、見積書 → 発注 → 納品書 → 請求書という流れが基本だ。特に中小企業相手では、この3点セットを丁寧に出すことが信頼につながる。

InvoiceFlowでは、見積書を作成しておけば、先方の発注後にそれをベースに納品書・請求書へと変換できる。田中さんは「見積もりの段階で作った内容を、請求書でまた打ち直す手間がなくなった。転記ミスも消えた」と話す。

結果:月20時間の事務作業が4時間に

導入から半年。田中さんの事務作業時間は、月20時間からおよそ4時間へと、月16時間の削減を達成した。

浮いた16時間で、田中さんは新規クライアントのコンペに2件追加で参加でき、うち1件を受注した。「事務に溶けていた時間が、そのまま売上に変わった感覚です。時給に換算すれば、月16時間は決して小さくない。それを丸ごと取り戻せた」

バックアップで確定申告も安心

田中さんは年明けの確定申告に向けて、InvoiceFlowのバックアップ/復元機能で請求データを定期的に保存している。「年間の請求書をテンプレート別・クライアント別に整理できるので、税理士に渡す資料づくりも一瞬。以前はフォルダの奥からExcelを掘り起こしていたのが嘘のようです」

テンプレートは「時間を生む資産」

田中さんは、これからフリーランスになるデザイナーにこう伝えたいという。

「クリエイターって、請求書のような『非クリエイティブな作業』を後回しにしがちです。でも、そこに毎月20時間も奪われていたら、本業の時間も気力も削られる。テンプレートは一度作れば資産になります。インボイス制度のような面倒なルールも、仕組みに組み込んでしまえば二度と悩まなくていい。デザイナーこそ、自分の業務フローもデザインすべきなんです」

本町のデザイン事務所で、田中健太さんは今、月末の3日間を制作に充てている。請求書は、もう深夜の敵ではない。